森のスタッチ

ネギま!とかアイマスとかで、ぐだぐだとやるブログ。

秒速5センチメートル感想

秒速5センチメートルパンフ

名古屋伏見ミリオン座、舞台挨拶の会に行って見てきました。
期待通りパンフにサインも頂けたのでホクホクw

感想はネタバレになりますので、大丈夫な方だけ続きからどうぞ。




第1話 桜花抄

 同じ転校生同士、また体が弱く似たもの同士であった貴樹と明里は、自然とその仲を深めていった。
 しかし明里の栃木への転校の後、貴樹の鹿児島への転校が決まり、その距離は離れてしまう。
 鹿児島へ引っ越す前に明里に会うため、貴樹はひとり電車に乗り込む。



ひらひらと“秒速5センチメートル”で舞い散る桜の下、並んで歩いた小学生時代の思い出。
明里から転校の話を聞いて、焦りや苛立ちから彼女を傷つけてしまったことへの後悔。
間近に迫った自らの転校、さらに広がってしまう二人の距離への不安。
…そして、会って手渡そうと手紙にしたためた明里への想い。
様々な気持ちを胸に北へと向かう貴樹のひたむきな姿に、若さゆえの行動に対するむず痒さみたいなものを感じさせつつも、ただ想い人のことだけを考えて行動できるというその年代と、貴樹と明里、二人の繋がった気持ちに対して、ちょっとした憧憬を抱きました。

『あの人との約束の当日は、昼過ぎから雪になった』

約束の時間を過ぎ、雪の為なおも動かない列車の中で必死に涙を堪える貴樹。
駅舎の待合室、ストーブに照らされながら寒さに震え、じっと俯いている明里。
永遠に感じられたその数時間を乗り越えて、時刻は深夜にさしかかった岩舟駅で二人の視線が合わさったとき。
この作品において、その瞬間が最も幸せなときであったように思います。
他愛のないほうじ茶の話も、一緒に食べた明里手作りのおにぎりの味も、紛れもなく最高のものであったでしょう。

しかし、寝静まった桜の木の下でそっと口付けを交わした瞬間…
一歩、大人に近づいたその瞬間、それまでただ会いたいという欲求だけで見ていた“明里”という女の子を、その存在を実体として感じてしまった瞬間。
彼女の存在のあまりの大きさと、それに対する自らの非力さを思い知ったときの貴樹の気持ちは、チクリと胸に来るものがあります。
早朝。別れのホームで、貴樹からは明里に「大丈夫」だと言ってやれなかったのも、そんな気持ちを表しているのだと思います。
ひとつの恋の“終わり”の予感を感じつつ、貴樹はまた電車に揺られるのでした。



第2話 コスモナウト

 都会を離れ、種子島に転校してきた貴樹、そんな彼に想いを寄せる少女、花苗。
 高校3年の夏、進路も決められずサーフィンも失敗続きの花苗は、ただ貴樹を追いかける日々を送っていた。



花苗視点で、明里のことをずっと想い続ける貴樹を描いた1編。
朝から弓道場で汗を流し、帰りに駐輪場で花苗と出くわし、いつも同じ商店に寄って、いつも同じジュースを買い、いつもの場所で別れる。
貴樹は変化のない日常を送る中、時間だけが淡々と過ぎていき、花苗の焦りは膨らんでいきます。

「絶対東京に彼女がいる」という友人のからかい。
いつも誰かに向けて打っている携帯のメール。
東京の大学という、貴樹の進路希望。
その全てが花苗を焦りに追い込むけれど、その全てが花苗が貴樹に惹かれた所以でもありました。

実際の貴樹は、花苗と同じように悩み、焦り、漠然とした未来を想っていました。
いつも、どこに送るでもない宛先のないメールを打っていました。
…いつも丘に一緒に登っていたのは、ここにはいるはずのない明里でした。

本当の貴樹の姿を垣間見た花苗は、迷いを抜け、久しぶりに波の上に立つことに成功します。
しかし、その日にしようと心に決めていた告白は、結局出来ませんでした。
轟音とともに空へと、高く高く昇っていくロケットを見ながら、花苗は気付いたのでした。

『遠野君が他の人と違って見える理由が、すこしだけ分かった気がした』

貴樹が自分ではないどこか、高く遠い場所を見つめているんだと言うことを。
そしてそんな貴樹だからこそ、自分は好きになってしまったのだと言うことを。
叶わぬ恋と知ってその思いを胸に秘めた花苗の気持ちは、切なくもある種の爽やかさを感じさせます。
一緒に帰るため偶然を装って駐輪場に出て行ったり、告白すると決めた日には同じコーヒーを選んだりと、とても可愛らしさをもった女の子だけに、その時の気持ちを思うと本当に胸に来ました。

そして貴樹は、明里の姿を追いながら東京へ戻ります。



第3話 秒速5センチメートル

 東京。明里と過ごした街に戻ってきた貴樹は、仕事に忙殺される日々を送った。
 3年間付き合った女性からは「1000回メールをやりとりしても、1センチくらいしか心は近づかなかった」と言われた。
 退職し、春の街を歩く貴樹。そこに見るのは、いるはずのない明里の姿。
 踏切りを渡る貴樹の目に映ったのは…



『いま自分が振り返れば…』

表題作ながら、最も短い作品です。
しかもその大半は主題歌である『One more time, One more chance』のバックで映像が流れるのみであり、大きなストーリーの流れなどは存在しません。

しかし、これこそが『秒速5センチメートル』の本質であり、描こうとしたテーマであると私は思います。

東京で働き出すも、色々なものを失くしているということに気付き会社を辞める貴樹。
付き合った女性にも、貴樹の心は自分には向いてないと見抜かれてしまう。
向かいのホーム、路地裏の窓…そこに見るのは、制服姿の明里の姿。

そして子供の時にも二人で通った踏切りに差し掛かり、振り返ると同時にタイトルバックに流れ出す『One more time, One more chance』。
このシーンに繋げる為にこれまでの流れはあったのだと思わせるくらいのとても印象的なシーンでした。

そして紡がれる二人の現在。
新海さんの演出は抜群のカメラワークとカット割りが好きだと言う人も多いと思いますが(いわゆる予告編が好き)、音楽に乗せたスピーディーな描写はまさにそれ。
過去の思い出と、現在の貴樹と明里の姿を目まぐるしく展開するシーンの中から見つけて、繋げて。

そして曲の終わりとともにラストシーン。
曲がかかる前の踏切りのシーンに戻り、向こう側を隠す電車が過ぎ去った時、そこには…

この結末や、3話で明里に婚約者の存在を出したことについては賛否両論あるかと思うのですが、少なくとも自分はこれで良かったと考えています。
まぁ最初に見終わった後には、ちょっと複雑な思いが胸の中に沸いてきたりしたのですが(笑)
幸いにもサイン会の時少しお話することが出来たので、新海監督に直接
「ラストで明里が踏切りの向こうに立っているという選択肢はなかったんですか?」
とちょっと意地悪な質問をさせて頂いたのですが、返答は「色々考えたんですけど、やっぱりああでした」ということでした。

必ずハッピーエンドにしなければならないエンターテイメント映画ではないですし、『秒速5センチメートル』という何とも言えぬ切なさを持ったこの作品のラストとして相応しいものであったと思います。

これからも貴樹は、様々な場所で様々な場面で明里の姿を見つつも日々を送っていくのでしょう。
明里も時には初恋の相手として貴樹を思い出したりすることでしょう。

二人はそれぞれの心の中に、決して忘れ得ぬ存在として住み続ける。


私も、『好きな人』という単語が出ると決まって思い出す人がいます。
告白も出来ず、思い出といえば修学旅行の写真に一緒に写って嬉しかったとか、そんな些細なことだけ。
そして、もう何年も会ってないというそんな人なのですが、今でもふとしたきっかけで思い出したりすることがあるのです。

交差点、夢の中、明け方の街、旅先の店、新聞の隅、急行待ちの踏切り。
いないと分かっているはずなのに、思わずその人の姿を探してしまう。
そんな切ない想いが、新海さんの美しい背景と共にリアルに描かれた素敵な映画でした。

テーマ:秒速5センチメートル - ジャンル:映画

  1. 2007/03/26(月) 00:42:25|
  2. 雑記
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